Slow Magic ―俺を変えてくれた人―
俺はタバコの火をいつもよりも丁寧に消して、美亜の方に体を向けた。
一瞬、美亜の体に緊張が走ったのを感じた。
手ぇ出されると思ったのか?
出さないよ。
まだ、手を出せるような男じゃないから、俺。
「ここから先はお前次第だ。聞く?聞かない?」
瞬きもせずに俺を見つめる美亜は、小さく頷いた。
「聞く!私、隆介のこともっと知りたい」
美亜は、瞳に涙をためてそう言った。
「ばか。何、泣いてんだよ」
俺は乱暴にティッシュの箱を美亜に渡した。
美亜がどんな気持ちで今まで俺のそばにいてくれたのか、わかった気がした。
ずっとずっと美亜は不安だった。
何を考えているのかわからない俺に振り回されて、いつも辛かった。