Slow Magic ―俺を変えてくれた人―
「周りは俺のことをかわいそうな子だと言った。みんなが俺に同情して、学校でも先生の態度が変わった。かわいそうにねってみんなから言われるのが嫌で、俺はいつも平気なフリをしていた。絶対泣かないって決めた。俺はかわいそうなんかじゃないって・・・・・・」
美亜は、静かに頷きながら俺の手を撫でた。
私をお母さんだと思っていいよと言う美亜の言葉に、俺は甘えることにした。
美亜が俺の頭を優しく撫でた。
思い出す。
遠い遠い記憶。
母さんの温もり。
母さん、俺は立派な男になれたかな。
俺は誰にも話したことのない気持ちを美亜にぶちまけた。
どんなに悔しかったか。
どんなにみじめだったか。
寂しくて、孤独で、誰にこの気持ちをぶつけていいのかわからずに・・・・・・
そして、俺は野球を始めた。
キャッチボールの相手は、トンネルの壁だった。