Slow Magic ―俺を変えてくれた人―
「ふふ。面白いじゃん。いじめてやるよ」
そんなことを言っている俺だけど、過去の恋愛はちっとも『S』じゃなかった。
俺は本気になると、大事に大事にして、相手を息苦しくさせてしまうのかもしれない。
まぁ、本気になる恋なんてもうねぇけどな。
「隆介、サンキュ。ゆかりも喜んでるよ」
卓弥が見せてくれた受信メールは、ハートマークだらけだった。
卓弥の彼女は2つ年下。
少し前に卓弥の軽い行動のせいで別れたこともあった。
今は復活して、うまくいっているようだった。
その様子は詳しく聞いているわけじゃないが、何となく知ってる。
彼女の信頼を取り戻そうと頑張っている卓弥を見ていると、ちょっとうらやましかったりもするんだけど。
そんな気持ちは、1秒で心から消す。
俺は、1人が合ってる。
傷ついた心のまま、それを隠して大人になった俺は、きっと大事な人を傷つけてしまう。
好きな女を傷つけたり、泣かせたりするに決まっている。
だから、俺はもう恋とか愛とかそういうものから卒業した。