記憶 ―夢幻の森―
岩間にある細い道は、
次第に夜空の月の明かりが届かなくなり、泉の精霊が言っていた通りに「洞窟」へと姿を変えていた。
「…真っ暗だね…。」
ハルカは、俺と繋ぐ手に徐々に力を込めていく。
多分、異性を意識しての恥ずかしさよりも、闇への恐怖心が勝ったのだろう。
暗い洞窟には、ちらほら水晶が光る程の明かりしかない。
ランプの明かりがなければ進むのは難しかっただろう。
「…コンは?ついてきてるか?」
俺はいつも騒がしい奴が大人しい事に心配になり、辺りをきょろきょろ目を凝らす。
ワンッ!
『…ここにいるぞッ!』
黒い体は闇に溶け、瞳だけが妙に目立ち一瞬驚いた。
『人間も妖精も、瞳がフベンだなッ?俺、平気。見えるもんッ!』
「…そうなのか?」
「そうだっけ?」
コンは得意気だった。
『そうだぞッ!ずっと一本道だぞ?んで、も少し先な?下に落ちる大きい段差があるぞッ!』
パタパタと翼を使い、上空から道を見下ろして俺たちに助言した。
「…助かるよ。ハルカ、ランプを貸してくれ。」
「うん。」
ハルカからランプを受け取り、赤い明かりで注意深く足元を照らした。