記憶 ―夢幻の森―
俺はハルカの半歩前を慎重にゆっくり歩く。
ハルカはその後ろで、
「…こんな暗いの初めてだ…」
と怯えていた。
俺と繋いだ腕に体を寄せ、
もう片方のあいた手もその腕に触れ、次第に俺たちの距離は縮まってしまっていた。
ドクドク…と、
心臓の鼓動が耳に響く。
どちらの音かは、分からない。
ハルカの恐怖によるものか?
先程の様に、俺を意識してのものか…?
それとも、まさか俺の…?
この、
甘い胸の痛み…
『落ちるの、次の水晶のトコだぞッ!』
「――…!!」
コンの声にビクッと肩を震わせた。
『…どしたぁ?』
その様子が鮮明に見えてしまったであろうコンが、俺に聞いた。
「ん…いや、何でもない。…次の水晶な?」
馬鹿な…、
馬鹿な事を考えるな…。
俺は大きな深呼吸を一つすると、コンの言う水晶を探した。
「これか?」
地面を照らすと、結構な段差になっていた。
今の俺の身長か、それ以上か。
気付かず落ちていたら、間違いなく怪我はしていただろう。
俺はハルカにランプを渡し、繋いだ手を離すと、先に飛び降りる。
ランプを受け取り地面に置くと、ハルカに手を差し伸べた。