記憶 ―夢幻の森―
「…ありが…とう…」
ハルカが俺の耳元で呟くと、
何だか急に切なくなって、
「…いや…」
と返すのが精一杯だった。
「…キースもさっき、精霊さんにあたしと同じ事言われてた…。」
「…あぁ…」
ぎゅっと俺を抱き締めながら、
「…キースも、寂しいの…?」
と聞いた。
俺はそんな単純な質問に、
ふっ…と笑って、
でも、少し躊躇いながら…
「…あぁ。…寂し…かった…」
そう
初めて…、
心の内を、
ずっと誤魔化してきた感情を…
他人に漏らした。
認めてしまったら、
急に目頭が熱くなって、
俺は静かに瞳を閉じた…。
自分の心に、自由を与えてやるという事は、
なんて難しいのだろう。
『羽根がないから飛べない』
周囲に言われ続け、過敏に自分の可能性を縛ってしまったハルカ。
飛べるかもしれないよ…?
俺の場合は…、
『孤独』という名の『罰』に、
自分自身を縛りつけて…
「…でも、今はハルカが居るから寂しくない…」
そう…
きっと、
…今だけは―――。
「…キースは、あたしが守ってあげるね?」
「…有り難う…」