記憶 ―夢幻の森―
「…ごめんね…?」
ハルカもしゃがみ込み、コンの頭を撫でながら、申し訳なさそうに謝った。
ピクッとコンが反応する。
「…行くぞ?コン。疲れたら俺の肩に乗っていい。」
『む。ちょっとだけそう思っただけだぞッ!乗んないしッ!俺はハルカ大好きっ子だぞ!』
頑張るもんッ!と立ち上がると、ハルカの気持ちを察してか、ハルカに飛び付き、顔をすり寄せる。
「ありがとね…」
二つの道は、やはりどちらとも再び森の中へと続く道だった。
どちらとも、湖を迂回する形になるだろう。
『どっちへ行くんだッ?』
やる気を出したコンが、分かれ道の脇にある平らな岩の上に登り、左右を交互に見た。
山は、湖の向こう、やや右寄りに存在する。
「…距離で考えるなら、右側の道だが…」
『じゃあ、右ッ!』
コンはいち早く岩から下りると、足取りも軽く歩き出した。
再び森へと差し掛かる揺れる黒い尻尾に向けて、
「…合ってるかは、分からんぞ…?」
コンには聞こえないように、呆れながら呟いた。
『ぅおぃッ!置いてくぞッ!早く来いよなッ、…一人はコワイじゃんッ!』
「ははっ…!まぁ…悩んでも分からん。行ってみよう。」
そうハルカの手を取った。