記憶 ―夢幻の森―
『………。』
コンは森から抜けた少し先の道で、黙って座っていた。
「…どうした?」
コンはこっちを見つめ、明らかにやる気を失っている。
『…自分で見ろ…?そして嘘だと言ってくれッ!?』
右手を、ひょいと上げ俺たちの視線を誘導した。
青く光る湖面…
その向こうには、
エウロパの山……
近付いたはずが、山は小さく遠いままだった。
「…え?えぇ!?」
「どういう事だ…?」
目の前の光景は、
何一つ、先程と変わらぬ姿で存在していた。
『なんとッ!さっきの分かれ道、再び?みたいなッ!』
「うそぉ…なんでぇ?」
『さっき俺が乗った岩も、もう少し行ったらあったぞ…』
コンが、力なく言う。
どういう事だ…?
知らぬ間に行き過ぎて一周したというのか?
いや、それならもっと時間はかかるはずだ。
分からない…。
「…はぁ、疲れちゃった…」
ハルカがぺたりと地面に座り込み、俺の手が引っ張られる。
「…大丈夫か?ハルカ…。この先の岩に座って考えよう。」
ハルカを引っ張り上げる。
『あ~キース…、岩には先客がいたんだけどもッ!』
そうそう、と今思い出したかの様にコンが立ち上がりながら言った。