記憶 ―夢幻の森―
「お姉さん、ただでさえ危ないのに、一人で余計危ないよ!?」
「ふふ…有り難う。私の名はエマ。…たまに道を確認したい時は、魔法を使って心の目で見るの…。だから平気よ?ただドジなの。」
可愛らしく舌を出し、肩をすくめると、
「みんなの顔、確認させてね?」
そう言い、空を見ていた瞳を閉じた。
エマの背中が、光を放つ。
徐々に、透明な羽根を広げると、羽根はまるで虹の様に七色に輝いた。
「エマも妖精なのか…」
俺は呟いた。
これが妖精の羽根…
妖精の力…
「魔法を使えば何となくは見えるのよ?でも、ずっとは疲れちゃうから。」
大事な時だけね、とエマは言い加えた。
あぁ、魔法の力は妖精の命の源だとセイジさんが言っていた。
使えば使うだけ消耗するのだろう。
「あ、ワンちゃん。犬竜だったのね!ごめんね?それで怒ってたのね?黒い強そうな子…」
『分かればいいんだぞッ!』
「この犬竜はコン!あたしはハルカ!」
エマは瞳を閉じたまま、本当に心の目で俺たちを見ていた。
「キース君…だっけ。貴方も私よりは少し年下かな?何かそう感じないけど。貴方は人間ね…」
そう言い当てた。