記憶 ―夢幻の森―
エマは俺の心配と不安を、声のトーンで察してか、笑顔で首を横に振る。
「え?違うの?エマ。」
ハルカも驚いて、露を塗る手を止め、エマを見上げた。
「違うの。私は不自由してないの。ただ私の恋人が、私の為に何年か前にここへ行くと言って、村に帰ってこないの。」
「じゃあ、彼を探しに?」
俺の問い掛けに頷く。
帰ってこない…、
その言葉は俺に不安を与えた。
やはり、この先は危険なのだろう…。
「じゃあ、エマ。一緒に行こうよ!あたしも彼を探すよ!」
「でも…」
「ねっ?キース!」
ハルカには全く敵わない。
自分の損得に関わらず、人の為に何かしてあげようと動く。
それに、自分と距離を置かなかった妖精仲間は、両親以外初めてで嬉しいのかもしれない。
「…あぁ、勿論。エマ一人は心配だ。一緒に行こう。ただ、花の蜜は譲ってくれ…。すまない…」
俺がそう言うと、やはりハルカはこう言う。
「エマと半分こは?半分じゃ効かないかなぁ…」
「ふふ…私はこの目気に入ってるの。だから治さないのよ?」
そうハルカの肩を探りながら、手を掛け、優しく語りかけた。
ワン…
『…で?一緒に行くのはいいけどさッ!?』