記憶 ―夢幻の森―
やる気なく地面に顎を乗せるコンの言葉に、ハルカがはっとなる。
「…そうだった…。道がないんだ。」
『それ、それ~ッ!』
お互いに溜め息をつき合って、岩から見える二本の道を見つめる。
「…道が…?」
エマがそう訪ねたので、この溜め息の経緯を話す事にする。
「二つの分かれ道になっていて、先程…右の道へ進んだのだが、知らん内に左の道からここへ戻ってきてしまった…」
「分かれ道…二つ?」
「あぁ…」
エマは、ふふっ…と頬をゆるめた。
「さっき、皆の顔を確認した時に、見えた道は三つだったわよ?」
「「えぇ!?」」
俺たちは、すぐ再び顔を道へと向けた。
やはり、どう見ても二つ…。
「ふふっ…だから、この目、気に入ってるの。たまに皆には見えない、隠された真実が見えるのよ?」
心の目は、表面上だけでなく、中身をも映すのだ、と…。
大事なのは、「中身」だよ、と。
エマは俺たちにそう教えた。
「よく見極めなきゃね…。何でも「外見」に惑わされちゃ駄目だよ?」
俺たちはしばらく、
青く光る湖面を、疑いの眼差しで見つめていた。
左でも右でもない。
すると、「真っ直ぐ」しかない。