記憶 ―夢幻の森―

やる気なく地面に顎を乗せるコンの言葉に、ハルカがはっとなる。

「…そうだった…。道がないんだ。」

『それ、それ~ッ!』

お互いに溜め息をつき合って、岩から見える二本の道を見つめる。


「…道が…?」

エマがそう訪ねたので、この溜め息の経緯を話す事にする。


「二つの分かれ道になっていて、先程…右の道へ進んだのだが、知らん内に左の道からここへ戻ってきてしまった…」

「分かれ道…二つ?」

「あぁ…」

エマは、ふふっ…と頬をゆるめた。


「さっき、皆の顔を確認した時に、見えた道は三つだったわよ?」

「「えぇ!?」」

俺たちは、すぐ再び顔を道へと向けた。
やはり、どう見ても二つ…。


「ふふっ…だから、この目、気に入ってるの。たまに皆には見えない、隠された真実が見えるのよ?」


心の目は、表面上だけでなく、中身をも映すのだ、と…。
大事なのは、「中身」だよ、と。

エマは俺たちにそう教えた。


「よく見極めなきゃね…。何でも「外見」に惑わされちゃ駄目だよ?」


俺たちはしばらく、
青く光る湖面を、疑いの眼差しで見つめていた。

左でも右でもない。
すると、「真っ直ぐ」しかない。

< 117 / 221 >

この作品をシェア

pagetop