記憶 ―夢幻の森―
12・叶わぬ願い
12・叶わぬ願い
俺たちは、二つの道の間を、草を掻き分け進む。
足元は湖の水が浸透している為かじめじめと湿り、体重で土が沈む。
もしかしたら、という期待にも裏切られ、足元には湖面が広がっていた。
道はない。
湖。
水。
それだけ…
ワンッ!
『あぁん?道ねぇぞ!?』
コンとハルカは注意深く湖面を見渡すと、困ったという顔で俺を見上げた。
俺も同じ表情を返しただけ…。
足元にある透明な水は、距離が遠くなるごとに青みを増す。
それは、湖の深さを表し、歩けるような遠浅な道は存在しないのだと、その光景で俺に語った。
「…それにしても、この青い光は何なんだ…?」
俺は誰に問うわけでもなく、ただこの目に映る光景に問う。
「…ねぇ~?」
ハルカが合いの手を出し俺の視線の先を追う。
水面の青さ。
そこから、一定の狭い空を隙間において、湖面の上には『青い光』が漂う。
紺色の夜空に上塗りされて漂う青色は、まるで生きているかの様に濃淡を繰り返した。