記憶 ―夢幻の森―


視界一面で、濃淡を繰り返している青い光。

淡い光たちは、遠く。
濃い光たちは、近く。

濃くなる、
青が濃くなっていく。

濃く、濃く、集まる。



「近付いて来てるの!?」

ハルカが叫ぶ通り、
光の波が、俺たちに向かって迫ってきていた。

虫のはず、
生き物のはずだ。

それなのに不思議と音もなく、徐々に徐々に集まりながら光を強め、俺たちの目の前にそれはあった。


ワゥ…
『…ぅおい、俺は遊ばないんだぞ?遊んじゃダメなんだぞッ!散れよッ!』

ワンッワンッ、と尻尾を大きく振りながら、コンが鳴いた。


「コンと遊ぶ為なんかじゃないって!」

『…んぁ?そうなのか?じゃあ何だ!?』

「分かんない…」

そう不安そうに、ハルカは俺の左肩に隠れる。

コンは相変わらず少し嬉しそうであり、エマは俺の右横で平静を保っている。

俺の鼓動は早まる。

何が始まるというんだ…。




『…汝は、何を望む…?』

青い光は、俺たちの視界で人の表情を作っていた。

< 121 / 221 >

この作品をシェア

pagetop