記憶 ―夢幻の森―
視界一面で、濃淡を繰り返している青い光。
淡い光たちは、遠く。
濃い光たちは、近く。
濃くなる、
青が濃くなっていく。
濃く、濃く、集まる。
「近付いて来てるの!?」
ハルカが叫ぶ通り、
光の波が、俺たちに向かって迫ってきていた。
虫のはず、
生き物のはずだ。
それなのに不思議と音もなく、徐々に徐々に集まりながら光を強め、俺たちの目の前にそれはあった。
ワゥ…
『…ぅおい、俺は遊ばないんだぞ?遊んじゃダメなんだぞッ!散れよッ!』
ワンッワンッ、と尻尾を大きく振りながら、コンが鳴いた。
「コンと遊ぶ為なんかじゃないって!」
『…んぁ?そうなのか?じゃあ何だ!?』
「分かんない…」
そう不安そうに、ハルカは俺の左肩に隠れる。
コンは相変わらず少し嬉しそうであり、エマは俺の右横で平静を保っている。
俺の鼓動は早まる。
何が始まるというんだ…。
『…汝は、何を望む…?』
青い光は、俺たちの視界で人の表情を作っていた。