記憶 ―夢幻の森―
精霊の言葉にぴくりとハルカの体が跳ねるのを感じて、ハルカに視線を落とす。
おどおどとした瞳と目が合った。
「…ハルカ?」
『…少女は、少年を失う事を怖がっている…』
「…ぁ…」
心の中を見通された、といった驚いた表情で、怯えて肩を震わせていた。
『…前向きな、自分の未来へと向かう心がない。…少年とこのまま「この時」を過ごしたい、この状況にさ迷い続けたい…。そう揺れている…』
ハルカは俺の視線から逃げるように、うつ向いて唇を噛んだ。
『…異世界から来た少年、汝が「帰る」事、「離れていく」事、少女は悟っているのだ…。そして受け入れられずにいる…』
「…ハルカ…」
もしも我儘が叶うのならば、俺もこの世界に留まりたい。
しかし、それは難しいだろう。
元々、住んでいた世界が違う。
「異世界」。
俺をこの世界に導いたあの二人にそう望んだところで、どうなるわけでもあるまい。
俺は、「帰る運命」だろう――?
ならば、
そうなる前に、少しでもハルカに「幸せ」を与えてから去りたい。
俺のこの意思は、曲がらないのだ。