記憶 ―夢幻の森―
「…ハルカ!?」
急に積極的になったハルカに驚きの色を隠せずにいた。
あの山の中腹へ…、
出た先に、どんな状況が待っているか分からない。
俺はまだ遠く見えるエウロパの山とハルカに、交互に目を泳がせて言った。
「…俺が先に。危険かもしれない。」
しかし、ハルカは強い瞳を俺に向けたまま、静かに首を振る。
そして、
――ちゃぽん…
そう湖に足を進めた。
「ハルカ…」
その足を止めようと伸ばす俺の腕を、横にいたエマが止めた。
俺は反射的に彼女を見た。
「…行かせてあげて?『前へ』進もうと、自分の心と戦っているのよ…。」
「………。」
そう言われてしまっては、止める事は出来ない。
俺は眉間にしわを寄せ、腹の底から込み上げる不安と戦いながら、ハルカを見つめる事しか出来なかった。
ゥワンッ!
『じゃあ、次は俺が行くッ!キース、たまには最後なッ?』
コンがそう明るく心を踊らせながら吠える内に、ハルカは湖面に消えた。
「……ぁ、あぁ…。」
『じゃぁ、後でなぁッ!』
コンもそう吠えると、大きく息を吸い込み水面へと消えていった。
「…エマ、一人で行けるか?」
「力を感じるから、大丈夫よ。」