記憶 ―夢幻の森―
有り難う、と微笑み、歩を進めるエマが後ろを振り返らずに話す。
独り言の様に、
しかし、尚且つ…
俺に向けての言葉の様に…。
「…私の恋人も同じ。私の為に自分を犠牲にしても良い、と。残された私たちの想いはどうなるの…?」
「…エマ…?」
エマは、俺の投げ掛けには答えない。
哀しみに瞳を落とし、機械的に足を進める。
「…まるで、ユピテルの様ね…、酷い人…」
――ちゃぽん…
「………。」
一人残された湖の畔。
しばらく振りに、一人。
独り…。
思いもよらない静寂の一時。
青と白、光の輪舞。
エマの言葉が、胸に刺さった。