記憶 ―夢幻の森―
13・犬竜の呪縛
13・犬竜の呪縛
湖面の白い光に身を任せ、
包まれて、目が眩む。
それは一瞬の出来事で…、
再び目を開けると、そこはまた深い森だった。
「……ハルカ…?」
そう周囲を見回すが、俺はこの場に一人、ぽつんと立っていた。
「…ハルカ!?コン!?」
俺の焦りの声だけが、静かな森に響いた。
緑色の光を降らせる木々。
地面には茶色の落ち葉と、透明に清らかに細く流れる湧き水。
『水脈を通じて…』
そう湖の精霊は言っていた。
別の場所に出てしまったのか!?
「ハルカ!!どこだ!?」
水脈の…、
この湧き水の流れに沿って、俺は走り出した。
どうも…
嫌な予感がする。
不安が大きくのし掛かり、俺の鼓動を早くさせた。
「…ハ…ハルカ!!返事をしてくれ!」
はぁはぁ…と息を切らせ、俺は右往左往に首を振りながらその名を呼び続けた。
「…樹の精霊たち、いないか!?いるのなら教えてくれ!」
俺は立ち止まり、周囲の木々に声を張り上げる。
「………くそ…!」
返答はなかった。
これだけの木々があるのに、精霊はいないのか!?
――ザァァ…!!
風はそう葉を揺らすだけだった。