記憶 ―夢幻の森―


くそっ!
遅かった…!!

俺はハルカから流れる赤い血に、動揺を隠せずにいた。


「守る」と、
そう決めたのに!!
なんて様だ…!

自分自身への怒りが、
対峙する狼たちへと向く。



――…ガルルル!!

三匹の狼が、
俺に照準を合わせていた。


ウゥー…!!
『…コイツら、許さねぇ!ハルカを噛んだんだッ!!』

コンは小さな牙を食いしばり、視線を敵に向けながら俺にそう訴える。


「コンッ!いいから下がれ!」

そう俺が叫んでも、コンは引かなかった。



「――コンッ!!ハルカの血の匂いを嗅ぎ付けて奴等の仲間が集まる!お前はハルカの傍に……ッ!?」

俺がそう言い終わる前に、
一匹の狼が俺の首元を狙って襲いかかる。

その鋭い牙を、剣で防いだ。


「…ぐっ!こちらも元狼なんでね。お前らの習性はお見通しなんだよ!!」

しかし、
その狼の姿は今の少年の俺には大きく見え、力も押し負けてしまいそうなのを必死に耐えていた。


「…くそッ…!!」


奴等は本能でそれを感じ取ってか、一匹は間合いを取ってコンの元へ…。


そして、
もう一匹は……


「…ぐッ!ハルカぁ!逃げ…ろ…!」

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