記憶 ―夢幻の森―

そう。
彼女たちの元へと、
飛び掛かって行った。


「…エマッ!!危ないッ!!」

視界の片隅で。

エマに飛び掛かろうとする狼。
エマを守ろうと、彼女の体を突き飛ばすハルカ。


その牙からは逃れたものの、
爪からは逃れられずに…

ハルカは突き飛ばされ、
地面に崩れた。



「…ハルカちゃん!?」

地面に膝を付くエマが、そう叫ぶ。


「ハルカぁぁ!!」

俺を押さえ込もうとしている狼の腹を、力一杯に足蹴し、相手が怯んでいる内にハルカの元へと駆けつけた。


「ハルカ!!」

ハルカの喉元を狙う狼の背を切り付ける。

思った程の深傷にはならず、奴は軽く悲鳴をあげて、仲間の元へと身を寄せた。


俺は倒れるハルカの肩を抱き上げ、周囲に目を配る。


三匹は合流して、
俺たちの前に位置するコンに、狙いを定めていた。



「…キース…、あたし、大丈夫だよ…?コンを助けて…」

ハルカは肩で息をしながら、俺の服を引っ張りそう訴える。


大丈夫なものか…!

腕と首元からは、
じわじわと…

血が滲んでいた。


「…くそッ!」

どうしたら…

俺が向こうで戦えば、
ハルカが危ない。

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