記憶 ―夢幻の森―

俺がここでハルカを守れば、
コンが…

間違いなく、やられてしまう。


いつかの二人の様に、
俺に魔術が使えたら…!
俺にそれだけの力が今あったら…


俺は、
なんて無力なんだ…。



ウゥー…!!
『…あんまり、俺を…怒らせるなよ…!!』


コンの後ろ姿が、プルプルと震えていた。

怖いだろうに…



『…俺のハルカを、二度も傷付けた…。ふざけんなよ…』


静かに、
ゆっくりと震えた声で、コンは言葉を続けた。


『…俺を、怒らせるなよぉ…!俺を…怒らせんなぁー…』


黒い毛並みを逆立て、ガクガクと震える。

そして恐怖で震えているわけではない事に気付き、


「…コン!?」

と俺は声をあらげる。


振り返ったコンは、
涙目で…、


『…ごめん…な?ハルカ。…俺、おれ……』

ポタポタと涙を流しながら、倒れるハルカを見つめた。


「…いいの。辛い思いさせて、ごめんね…コン……」

ハルカはそう言い残し、意識を失った。


「ハルカッ!」

「大丈夫、気を失っただけよ…。今、血を止めるわ。」

エマはハルカのカバンから、手探りで例の小瓶を取り出す。

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