記憶 ―夢幻の森―
14・眠り姫
14・眠り姫
「コン?…もう泣くなよ。男の子だろう…?」
俺は、ふっと眉を上げながらコンに向けてそう言った。
クゥ…!
『…うぅぅ、…泣いてないやいッ!』
……嘘だ。
コンは未だ落ち込んだまま。
ハルカのカバンに頭から潜り込み、隠れきれていない尻から尻尾が小刻みに震えているのが分かる。
「…いつまで隠れてるんだ?」
『………。』
仕方がないか…。
ハルカが、未だ目覚めないのだから…。
俺たちは、先程襲われた場所に留まり、ハルカが目覚めるのを待っていた。
ハルカは眠ったまま。
沈むコンの手前、
俺は明るく振る舞ったが、心は沈んでいた。
俺がもっと早く駆け付けていれば…、俺にもっとハルカを守る力があれば…。
それに、コンにこんなに悲しい思いをさせずに済んだかもしれない。
そういくら後悔しても、し足りない。
「…ハルカちゃん、起きないわね…」
大丈夫かしら、とハルカの横に腰掛けるエマがハルカの頬をさする。
「…あぁ…」
エマが手当てした傷口の白い布が痛々しい。
包帯なんて大層な物は、ユリネさんにも想定外だったのか、ハルカのカバンには入っていなかった。