記憶 ―夢幻の森―


本当に、
ごめんな…?

そうハルカを見つめながら、
柔らかに風に吹かれる髪を撫でる。


きっと…、

「初めてのキス」

だったに違いない、よな…?


こんな形で、
勝手に奪った俺を、

許してくれ、とは言わない。


ハルカにとっては、
俺は…「初めての友達」。

それ以上の感情は、ないんだろうな?

奪うだけ奪って…、

何の償いも出来ずに「この世界」から去る、
ハルカから離れていく俺を…、


…恨んでいい…。


でも、
俺だけは忘れない。

忘れたく、ない。


今日の、
この時の事を……



そう心に誓って、

俺の唇は、
ハルカの小さな唇に、

しっかりと、触れる―――。


露とともに、
俺の想いも伝わればいい…。



唇が離れると…、

ハルカの白い肌が、普段より近すぎて…

こんな時に不謹慎だと感じながらも、俺の鼓動は早さを増していた。


苦しい…
胸が、痛い…。

堪らなく…愛しい、とそう思う。

顔と顔を向き合わせたまま、
俺はしばらく、ハルカに熱い視線を送り続けていた…。



――…こくんっ…

再び…、
ハルカの喉が鳴る。

その音に、はっと我に返った。

< 147 / 221 >

この作品をシェア

pagetop