記憶 ―夢幻の森―
ずっとここにいても仕方ない。
「…よいしょ…」
俺は立ち上がる。
体は想像より軽かった。
目線も低かった。
「…そうか…」
少年の姿だった事を思い出す。
見慣れない小さめの手で、パンパン…と、尻や足の土を落とした。
「うーん…」
俺は、周囲を一通り見回すと悩んだ。
どっちに行けば…、
…何があるんだ?
そもそも、
何をしに来たんだ?ここに。
俺をここに導いた彼らの言葉を思い出す。
運命だとか、巡り逢うとか。
必然だとか、時間がないとか。
…すまないが、
さっぱり分からない…。
そのうちに帰れるのか?
また、彼らに会えるのか…?
俺の心配は、そればかりだ。
――ザァッ…
大きな風が、
緑の光を強くさせた。
『…何か、お困りか――?』
まるで、風が声を運んできたように…、
俺の耳元を通り過ぎる。
「……!?」
人か?どこだ?
周囲を見回してみても人影一つない。
俺は警戒した。
片方の足は一歩後ろへ。
手は腰元で剣を探す。
それは、昔の癖。
今の俺は丸腰。
それに気付くと、小さく舌打ちした。