記憶 ―夢幻の森―
そう俺たちの先を駆け出すコンの背中は、本当に嬉しそうに軽やかに弾んでいた。
「…転ぶなよ?コン。」
『わかってるってッ!』
ハルカは、最初は俺たちと一緒に歩き出した。
しかし…、
少し歩くとその体はよろめき始め、未だ完全には回復していない様だった。
もしかしたら…
「回復」は、
しないのかもしれない。
自分で歩く。
これ以上、迷惑をかけたくない。
そう嫌がるハルカを、半ば強制的に自分の背中に乗せ、今の状態に至っていた。
「…優しいね、コン。あたしの赤いランプ、割れちゃったから代わりに「赤い石」なんだね、きっと。」
ハルカは、俺の顔の横でコンの持って来た小石を眺めてクスクスと笑った。
「…ねぇ、キース。」
「…うん?」
俺はコンの背中を目で追いながら、足を進める。
「あたしが眠ってる間、コンは…泣いてた…?」
ハルカは赤い小石を片手で握りしめ、俺の首に再びしがみつく。
その腕は、
微かに震えていた。
――男同士の秘密。
俺は少し躊躇いながら、
「……少し、な?」
とだけ、答えた。
…すまん、コン…
心の中で、そうコンに謝った。