記憶 ―夢幻の森―

何…?
頼まれた…?

俺の足は止まった。


『はわッ?何だよッ、キース。急に止まるなよ!』

ハルカの手に小石を乗せようと、翼を羽ばたかせていたコンが、俺が足を止めた事に怒った。

せっかくの小石を落としてしまうところだったらしい。


「…どうしたの?」

エマも俺の足音が消えた事に気付いて、後ろを振り返る。



「…コン、狼たちは誰に頼まれたと言っていた!?俺たちを襲え、と頼まれたのか!?」

急に深刻そうに話し出した為か、全員が驚いて俺を見た。


「…え…!?」

コンの言葉が伝わらないエマは、俺の言葉に驚きの表情を隠せない。


『…し、知らねぇよッ!必死だったし。き、急に怒んなよッ!』

コンは、おろおろと俺の顔色を伺った。


「…あぁ、悪い…」

『キース、元オオカミだろッ!アイツらの言葉、分かってたんじゃないのかぁ…?』

そんなコンの言葉に、
俺は、はっとなる。


狼たちの言葉…、
…分からなかった。

なぜだ…


「…分からなかった。コン、奴らは他に何か言ってなかったか?」

『…ん~。ううん?何にもッ!』

「…そうか…」

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