記憶 ―夢幻の森―
あまりに情報が少なすぎる。
何も、分からない。
ただ…、
狼たちは何者かに頼まれて、俺たちを襲った。
これは、間違いないだろう。
誰に…?
ただでさえ、時間がないというのに…、
俺たちを阻もうとする者…。
見えない敵の姿に、
俺は眉間にしわを寄せ、焦りの色を浮かべていた。
ワゥ…!
『キース、恐い顔すんなよ~ッ!しょーがねぇから、この赤い石はキースにやるよッ!』
「…あ…?」
コンは俺の目の前まで移動すると、小石をくわえた口を差し出した。
「…あぁ、有り難う。」
俺は敵の事を頭にちらつかせながらも、断るわけにもいかず、背中にいるハルカを落とさない様に前のめりの体勢で片手を出す。
ワンッ!
『ハルカとお揃い!きゃぁ。俺、やいちゃう~ッ!』
コンは何か余計な事まで言いたげに、ニヤニヤと笑いを口に含む。
じろり、と俺が睨むと、
そんな俺の反応に、
『きゃぁあぁ~ッ!』
と喜んで、
尻尾を振って駆けていった。
「あはは、変なコン~。」
そうハルカは俺の顔の横で笑顔を溢す。
ハルカにつられるように、俺からも自然と笑い声が漏れていた。