記憶 ―夢幻の森―
俺たちは、徐々に傾斜がひどくなる岩肌を進む。
上へ、上へ…
ごろごろと転がる石の中に、
時おりコンが先程拾って来た様な色の付いた石ころが混じる。
青、緑…
それらもまた、
月の光に照らされて、
キラキラと…
俺たちの足元を照らした。
「…キース、あたし降りるよ?歩けるよ…?ねぇ。」
ハルカが俺の背から顔を覗き込む。
「…いや、大丈夫だ。」
「でもっ…」
ハルカはそこで言葉を詰まらせて、しばらくすると静かに再び口を開く。
「ごめんね…。あたしの知らないところで、キースがあたしの為に危ない事するのが嫌だったの。だから、付いてきたの。なのに…」
徐々に小さくなる声。
俺の体を抱き締める力は強くなる。
「…なのに、あたしお荷物になっちゃっただけだよね…。ごめんなさい…」
しゅんとなるハルカに、
俺はふふっと笑って、
「…俺はハルカやコンと、こうして旅が出来て楽しいし、嬉しいんだよ…?」
そう言った。
だから、
そんな事、言わないでくれ…
悲しまないで。
笑って…?
そんな願いを込めて…
俺の想いが伝わったのかな。
ハルカは、
「ありがとう」
と言って、笑った。