記憶 ―夢幻の森―
「…もうすぐ、頂上かしらね?」
エマが白い杖で足元を確認しながら、俺たちにそう聞いた。
視界を先へと向けると…、
道の先で俺たちを座って待つコンが、尻尾を振って俺たちを見下ろしていた。
コンの両脇には、
高い石柱の様な物が、二本。
あそこが、
頂上なのか…?
石柱の存在感の大きさに、
俺の期待が膨らむ。
「…あぁ。そのようだ…!」
「ふふっ…、そう。」
そうどこか寂しげに微笑むエマを見て、エマの恋人の存在を思い出す。
「…エマ、すまない。恋人を探す前に、頂上へと着いてしまうかもしれないな…。」
ハルカも、あっ…と小さな声を漏らした。
「ふふっ、いいのよ…?時間もないし、ハルカちゃんを治すのが先よ?」
「…有り難う。」
「ごめんね、エマ…。」
ハルカも申し訳なさそうにエマの顔色を伺った。
「…ユラ、だったかな?恋人の名は。」
俺がそう聞くと、
エマの笑顔が、急に消えた。
「…どこで、その名を…?」
エマの足は止まり、無理に笑おうと頬をひきつらせながら俺の返答を待つ。
「…あ、あぁ。昨夜、エマがうなされながら寝言を…」
どうした…?
俺は首を傾げる。