記憶 ―夢幻の森―


「…そ、そう。ごめんなさい。…そう、ユラっていうのよ?」

俺は必死に笑おうとする表情を何とか読み取ろうと、エマを見つめていた。


「へぇ~、ユラ!良い名前だね。どんな人~?」

「…ん~、優しい人よ?」

そうハルカに見せた笑顔は、いつもの穏やかなエマで…

先程の一瞬の「間」が、
余計に気になった。


俺の頭の中は、
ハルカ、ハルカ、ハルカで…。

正直、エマの事をあまり気に掛けていなかった。

穏やかに笑い、
俺たちを見守り…

自分の事をあまり多く語らない、少し大人な振る舞いに、
甘えすぎていたのかもしれない。

彼女だって、
辛いだろうに…。


俺に、あとどのくらいの猶予があるか分からない。

しかし、
ハルカを治したら…

その後は。

時間の許す限り、
彼女の想い人を探そう。

そう思ったんだ…。



――…ウゥゥ~…!!


「――ッ!?」

コンの唸り声に、
はっと顔を上げる。


「……コン…?」

ハルカも俺の肩から身を乗り出し、コンの姿を探していた。


先程の石柱を見つめるが、
コンの姿はなかった。

唸り声が、少し遠い。


「…あいつ、先に行ったのか!?」

「コンッ!!」

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