記憶 ―夢幻の森―
『キース!アイツが、オオカミに命令したんだッ!この山のバンニンだって言うんだッ!』
「…この山の、番人…」
番人は、森の主のじぃさんだと思っていた。
しかし彼は、
「入り口」を守る番人だったのか。
――グルルル…!
影が霧の中から、
徐々に俺たちに近付く。
「…なんて言っている!?コン、通訳しろ。」
俺は焦りを隠そうともせず、声をあらげた。
そんな余裕は、もう無かった。
『…この先にある花は、私が守っている。花の蜜が欲しいのなら、私を倒せ…って!!』
霧の濃度が薄くなり、敵の姿が徐々に見えてくる。
――グルル…
大きな…白い、毛並み。
鋭く光る切れ長の瞳には、冷たさを感じる。
鋭利な牙に、長い爪。
空に向かって伸びる角。
…この姿は…、
見た事があった。
まだ、記憶にも新しい。
「犬竜」――…
『…どうしよう、キース!アイツの主は永遠の魔法の力を持つんだって!セイメイリョクが尽きる事はないんだってッ!』
「…主が、やはり、いるのか…。」
本当の敵は、
その「主」の方なんじゃないのか…?
『…主を守る犬竜同士、私と戦えって、…俺に…』