記憶 ―夢幻の森―
俺たちのすぐ横で、
地面の青や緑の石たちから、白い煙が上がった。
――道は、ない。
コンの通訳なしにも、その行動がそう物語っていた。
奴が、もう一度攻撃しようと上空から息を大きく吸い込んだ。
…そんな時だった。
「――やめなさい、オリペ…」
そう…、
後ろから声がした。
「――!?」
俺は瞬時に振り返る。
「…え…?」
――キュゥ…
奴は、その声に従った。
どういう…事だ…?
ワンッ!!
『…んな!?アイツ、今…「エマ様」って…!!』
石柱の…
ハルカの横に、
――エマが、立っていた。
「…彼女の名は、スプリウス・オリぺ…。」
エマは普段通りに笑みを浮かべて、穏やかに話す。
「…オリぺは、私の犬竜よ…」
「――…何!?」
俺はそう表情を崩して、エマを見つめる。
「…エマ?…どういう事…?」
ハルカもエマのすぐ横で、不安が募る表情で彼女を見上げる。
エマは、
ふふふ…と、
穏やかに笑うばかりで、
俺は苛立ちを隠せない。
エウロパの山の番人なのだという白い犬竜、
その「主」である、
エマ…
敵…なのか。
初めから、敵だったのか…?