記憶 ―夢幻の森―


エマは、そう悲しそうに微笑んでいた。


「…この暗い世界を照らす、月になったのよ…?」

「…ははっ…。な、なにを…言って…」

俺は乾いた笑いを漏らしながら、言葉の途中で、

『神話』を思い出していた。

そんな…、馬鹿な…。

まるで…


「…ユラは、人々を照らす『光』になったの…」

そう夜空に光る惑星を、愛しそうに見上げる。


「…ま、まさか…、ユラというのは…」

俺が半信半疑で導き出した答えを悟ってか、エマは満足そうに頷いた。


「…ユラ、そう私は愛称で呼んでいた。彼の本当の名は…」


まさか…
あり得ないだろう…?



「――ユピテル・ラディス。」


「――…!?」

それは、

この世界の「神」の名だった。


絶句する俺たちに、
エマは言葉を続ける。


「…そして、ユラもまた私の事を愛称で呼んだ。エマ、と…」


ワンッ!
『…う、ウソだぁッ!』

「…本当…に…?」

幼い頃から慣れ親しんだ神話の内容…。

ハルカは両手を口に当て、信じられないとばかりに目を見開いていた。



「…私の本当の名は、エウロパ・マーシュ。」


俺の記憶にも真新しい、
その名を…

エマは口にした。


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