記憶 ―夢幻の森―
俺たちは誰も言葉を発せずに、ただ立っていた。
「…この場所には、昔は神殿があったの。私が生涯、ユラを想っていた場所。」
大分、大昔の事なんだろう。
今、残るのは…
石の柱と…
「…この敷き詰められた石は、私が集めた物。空から…ユラの光が反射して、彼が私に気付く様に…」
「………。」
エウロパが歌ったとされる詩が、俺の脳裏をかすめた。
月夜の晩に、集める光
果てしない楽園へ、
私を導くもの…
生まれた意味を知る
時空を越えて、
失われた星の記憶を知る
エウロパの…、
いや…
エマの、願い。
ユピテルが自分に気付くよう…
そして、
待っていたはずの幸せな未来。
その無き姿を求めて、
彼の想いを求めて、
歌ったのかもしれない…。
そのエマが、
今、ここにいる。
「…私が命尽きた後、私の『想い』だけが永遠に残った。私は姿を変え、オリぺを従えて、今もこの山に存在している…」
「…存在…?」
想いだけが、残った…?
生きているわけではないのか…?
俺がそう顔をしかめて聞くと、
「…オリぺ、力の解放を止めなさい。見せてあげなさい。」
エマはそう言った。