記憶 ―夢幻の森―
――キュゥ…。
オリぺはそう頷くと、
その白い大きな体を縮めた。
みるみる可愛らしい姿へと、変わっていく。
つい昨日のコンを見ているかの様だ。
ワンッ。
『おぉぉッ。ちっちゃくなったッ!』
自分を棚にあげて、コンはそう驚いた。
『ちっちゃければ、オリぺも可愛いのになぁ?』
そう俺に同意を求めた。
自分もだろう?
そう言いたいところだが、
今の俺にそんな余裕はない。
オリぺが体を縮めると、
少し後ろに…
その姿に隠されていた岩肌が姿を現す。
オリぺから放たれていた白い霧も無くなり、視界がより一層にひらけた。
「…あの崖の上は、私がユラを日々見上げた所。そこに、一輪の花が有る…」
あそこに…
『エウロパの涙』が…
「…私はエウロパの化身、あの花の精霊です…」
二つの…
半分以上重なりかけた白い惑星を背景に、
光輝く一輪の、
純白の花――…
その開きかけた蕾は、
月の光を浴びて、
咲き誇るのを今か今かと待っていた。
「…私は約50年に一度、一晩だけ…、彼の想いに触れられる。彼に逢えるの…」
50年に、一度…
あまりに長い…。