記憶 ―夢幻の森―
17・友達
17・友達
「…ユラは、人々の為に自分を、自分の心を犠牲にしたわ…」
「…あぁ、本で読んだ。」
怒りの心から始まって、
エマを愛する心…
そして、
自分に残る全ての心を…。
「キース君、貴方にも自分を犠牲にしてもらいます…」
穏やかに、
真っ直ぐに俺を見た。
「…ちょっ…と待ってよ!どうしてキースなの!?試練を受けるなら、あたしでしょ!?」
ハルカは声をあらげて、エマに申し出る。
エマは、すぐ横にいるハルカを見下ろして言った。
「…ハルカちゃん、貴女は駄目よ。キース君を失うくらいなら、自分はどうなってもいいと…諦める。そうでしょ?」
ハルカは、ぐっ…と言葉を飲み込んだ。
「私も同じだったわ。ユラを失うくらいなら、こんな世界なんて…どうなってもいい、と。」
エマの小さな笑い声だけが、静まった空気に溶けていた。
「…それでも、ユラは行ってしまった。今の貴方も同じでしょう?キース君。」
「あぁ…」
度重なる…
謎かけにも似た例え話に、
ハルカとコンは、
渋い表情をしながら…、
それでも必死に理解しようと努めていた。