記憶 ―夢幻の森―
「…貴方にも、代償に『心の一部』を、捧げて貰います。」
「心を…?」
「…そう。ハルカちゃんを想う心、コンちゃんへの心。それとも…、忘れたくない昔の仲間を想う心…。無くすとしたら、どちらがいいかしら?」
「……!?」
『心』とは…、
すなわち、
『記憶』、か…?
俺は古い仲間たちへの想いを、
記憶を…
失いたくなくて、
夢の中に、閉じこもっていた。
でも、今は。
ハルカがいる。
コンが、いる。
新しい、失いたくない想いが…
増えているんだ。
その中で…
何を、忘れる…?
「…貴方の事だから、目の前にいるこの子たちを悲しませる事は、出来ないのでしょうね…?」
エマは、どこまで俺という存在を知っているのだろう。
過去の想い、
今現在の俺の迷い。
その全てを見透かされているようで、
俺は怯んでいた。
「私は妖精であると同時に、花の精霊…。キース君の心を映す事も出来るわ。」
…何…?
「…これなら、どうかしら…」
俺は注意深くエマを見つめる。
エマを見ていた、はずだ。
なのに…
そこに居るはずのない人物が、
そこには、居た。