記憶 ―夢幻の森―
「――やめてよ!!何でそんな事言うの!?エマッ…!やめて!こんな事、…やめてっ!!」
ハルカが、涙を溢しながら叫んでいる。
信じられない、とばかりに慕っていたはずのエマを睨んでいた。
それでも、
エマは何も言わずに、俺の決断を待っていた。
ハルカ…
俺は、どちらにしても、
この世界から消える存在。
ハルカが悲しむことには、
変わりない…。
俺は、
目の前にある剣を見つめて、
少し考えていた。
俺が…、
この世界から消えるのか。
今、この剣で自分を刺して…
俺という『存在自体』を消すのか…。
ハルカにとっては、
どちらでも変わらない。
――居なくなる。
そうだ…
変わらないな…
俺の手は、震えていた。
震える手を押さえ、しっかりと剣を持ち直す。
自分へ、と…。
「…いや…だ…!嫌だよ!キース!」
どうせ散るのなら、
少しでも俺の愛が、
君の心に届きますように…
俺は愛しいハルカの泣き顔を見つめて、
ふっ…と、
微笑んだ。