記憶 ―夢幻の森―


ワンッ!
『――…キース!キース、俺を忘れたらいい…!!』

「――!?」

ふと我に返ると、

コンが両手を俺の足に掛けて、瞳を潤ませていた。



『…俺を、忘れたらいい!』

「…コン…?」

俺はコンを見つめて固まった。


『…だから、やめて…?』

そう後ろ足で立って、俺の足に何度も手を掛け直す。

ハルカも激しく嘆いていた動きを止め、予想外の言葉に戸惑っていた。



『俺は、ハルカとずっと一緒だからッ。キースがハルカを忘れなければ、俺を忘れても…。もう一回、キースとまた友達になるからッ!』

コンは、
必死にそう鳴いていた。


「…それは駄目よ。安易すぎるわ…。無くすのなら、ハルカちゃんとコンちゃん二人とも…。」

エマはそう首を横に振る。


クゥン…
『なんで、そんな意地悪言うんだ…』

コンは尻尾をぱたりと下げ、涙を溢す。


俺は、
…どうしたらいい?


今…、
二人を悲しませない為には。

砂漠時代の記憶を無くす事。

しかし、
それは…、

忘れてしまったら、
『俺が俺でなくなってしまう』
そんな気がするんだ。


それでも…
忘れていいか…?

アズ、アイリ。
そして、アラン…


――…すまない。

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