記憶 ―夢幻の森―
誰の目にも届かない、
エウロパの山の山頂――…
そこに独り、
ぽつりと気高く咲く、
一輪の花…
俺と…、
同じだったんだな…。
「…誰でも、似たような心を持っているのかもしれない…。それに負けずに生きてゆく強さが必要なのよ…。前に進む為に…」
エマの言葉は、
いつも、意味深い。
「…私のように、ならないで欲しい…。強さを、身に付けて欲しい。それが、二人の『試練』だった…」
あぁ…、
そうなのか…。
エウロパは、
悲しみに満ちた、
…心優しい花だな…。
「…じゃあ、キースの代償は!?心を無くさなくてもいいの?」
ハルカが少し期待を寄せて、エマを見る。
その返事は、
俺は聞かなくても知っている気がしていた。
エマは俺の予想通り、
静かに首を振った。
「…私は、奪わない。私は、ね…?」
「どうゆう事…?」
ハルカとコンは、眉間にしわを寄せて首を捻っていた。
「…キース君は、分かっているわね?…前に進むという事は…」
「あぁ…」
俺は、知っている。
「…キース君が『前に進む』とね、私の力なんかじゃ及ばない…とても強い力で、その記憶は還ってしまう。」