記憶 ―夢幻の森―
それ以上は、
俺も聞かなかった。
何より、
世界が輝き出したから…。
今…、
答えを出す事が全てではない。
この答えを探す為に、
前へ進むのも、悪くない。
そう思えたんだ…。
いつか、
ハルカたちと、
再び出逢えるのなら…
ワン…
『…――つーか、エマはいつから俺の言葉が分かるんだ!?』
コンがそう鳴いた。
エマは、わざと聞こえない振りをした。
もう、コンの言葉が分かっているのは明確だった。
その瞳も…、
実際には本当に見えないのかもしれないが、
彼女は、「精霊」。
「心の目」は、
常に開いていたのだろう…。
コンはエマの返答を、まだかまだかと待っていた。
黒い尻尾を振って…。
「……さぁ、そろそろ時間かしら。見て…?」
エマに導かれて、俺たちは月を見上げた。
二つの月は、
今にも重なりそうだった。
崖の上の一輪の白い花、
エマの体が…
きらきらと、
光を帯びて輝き出す。
「さぁ、ハルカちゃん。小瓶をオリぺに渡しなさい…。私は、体に戻ります。」
オリぺが白い尻尾を振りながら、ハルカの元へと小瓶を受け取りにやって来る。