記憶 ―夢幻の森―


それ以上は、
俺も聞かなかった。


何より、
世界が輝き出したから…。

今…、
答えを出す事が全てではない。


この答えを探す為に、
前へ進むのも、悪くない。

そう思えたんだ…。


いつか、
ハルカたちと、

再び出逢えるのなら…




ワン…
『…――つーか、エマはいつから俺の言葉が分かるんだ!?』

コンがそう鳴いた。

エマは、わざと聞こえない振りをした。
もう、コンの言葉が分かっているのは明確だった。

その瞳も…、
実際には本当に見えないのかもしれないが、
彼女は、「精霊」。

「心の目」は、
常に開いていたのだろう…。

コンはエマの返答を、まだかまだかと待っていた。
黒い尻尾を振って…。



「……さぁ、そろそろ時間かしら。見て…?」


エマに導かれて、俺たちは月を見上げた。

二つの月は、
今にも重なりそうだった。

崖の上の一輪の白い花、
エマの体が…

きらきらと、
光を帯びて輝き出す。



「さぁ、ハルカちゃん。小瓶をオリぺに渡しなさい…。私は、体に戻ります。」


オリぺが白い尻尾を振りながら、ハルカの元へと小瓶を受け取りにやって来る。

< 187 / 221 >

この作品をシェア

pagetop