記憶 ―夢幻の森―
ワンッ!
『…今、無視したッ!エマ、俺を無視したッ!俺の事キライなんだぁッ!』
俺の胸元にすり寄りながら、そう嘆くコンにエマは堪らず笑顔を漏らした。
「…ふふ…、好きよ、コンちゃん。貴方、口は悪くて意地っ張りだけど、本当に良い子だもの。最初から言葉は分かっていたの、ごめんね?騙して…。」
エマは、そうコンの頭を優しく撫でた。
初めてエマに撫でられたコンは、ちょっと嬉しそうに、
ワンッ…!
『許してやってもいいぞッ!撫でてくれたしな?』
と尻尾を振った。
ハルカは、カバンの中から空の小瓶を取り出す。
「…この瓶を、オリぺちゃんに渡すの?」
キュゥ…
オリぺはそう催促すると、ハルカの体に足をかけて口元をその手に寄せた。
オリぺは自分の口に瓶をくわえると、
ちょこちょこと…
白い尻尾を振りながら、光る大地を横切っていった。
花の元へと、
進んでいったんだ。
その背中を、
俺たちは見守っていた。
「…時間、ね…。やっとユラに会える…!ユラの心に触れられる…」
エマは、月を愛しそうに見つめて…
すぅ……と、
消えた…。