記憶 ―夢幻の森―
オリぺは小瓶を花の蕾の横へ、コトリと置いた。
蕾が立つ場所は岩肌で、その音は俺たちの元へも届いていた。
土では、ない。
きっと、
水も届かないこの場所で…
エマは…、
彼への想いだけを、その身の養分に…
永遠に、
生き続けている。
…50年に、一度。
ユピテルの心と、
彼のエマへの愛情の心…。
離ればなれに…
夜空に散りばめられた心。
その二つが重なる時、
やっと…
エマは、彼に会えるんだ。
俺たちは肩を寄せ合って、
その瞬間を…
自分たちの事の様に、
待ちわびた。
邪魔は出来ない。
俺たちはこの場に留まって、
その光景を見ていた。
「……ぁ…」
ハルカが、
小さく声をあげた。
「…あぁ…。」
俺もその光景を見つめながら、そう静かに答えた。
無意識に…、
俺たちは、
ぎゅっ…と、手を繋いで。
互いの温もりを感じながら、
心穏やかに見ていた。
二つの「心」が重なって、
ひとつの…、
「光」になった――。
その光を浴びて、
目一杯に…
溢れんばかりに浴びて、
「花」は、
自らも「光」を放つ――