記憶 ―夢幻の森―
確かに。
自分にとっては普通で、この世界が異常だと…。
『普通』など、
そもそも何て曖昧な言葉。
俺は、ラルファの事を話した。
紅い砂漠の事を話せば、
『砂漠とは何だ?』
と返ってくる。
一つ一つ丁寧に説明する度に、じぃさんは感嘆の声をあげ緑の光を俺に降らせた。
月が一つだと話せば、
『ここでは月と呼ばれる物は大なり小なり第16まであるぞ』
と答える。
これには俺も驚いた。
魔術という不思議な力を持つ者がいた事を話せば、最後まで様子を聞いてから、
『魔術は、ここでいうところの魔法と近いな』
と言った。
「…ほぅ、魔法…?」
『うむ、羽根を持つ者…妖精が使う力じゃ。』
「それは会ってみたいな…。」
俺は表情を輝かせた。
『お前さんの世界もなかなか興味深い所じゃの…?』
俺は少し黙って、じぃさんから目を手元に移す。
『…ん?』
「…正確には、前に『いた』過去の場所だ。今は…別の場所にいる。」
『……そこは?どんな所じゃ…?やはり似ているか?』
「ははっ…分からない。知らないんだ…」