記憶 ―夢幻の森―
ワンッ!
『あ。エマもパパと同じで、インチキ…ぴぎゃッ!』
俺が後ろから頭を軽く小突くと、コンは大袈裟に声をあげた。
『――キースッ!何すんだよ!俺を小突いていいのはハルカだけなんだぞッ!』
そう俺の顔を膝から見上げて怒っている。
「…エマに失礼だぞ。」
神話は、現実だったんだ。
困った奴だ。
失礼にも程がある…。
そう俺がコンを睨んでいると、ハルカも俺に同調した。
――…ヴゥ…
ハルカの横に静かに座っていたオリぺもまた、主人に対してのコンの言動に牙をむいていた。
『…オリぺまで怒るなよぉ。冗談じゃぁん…』
コンは、ばつが悪そうにそう目だけ残して頭を下げた。
オリぺはプイッとコンから視線を逸らすと、そっぽを向いた。
「…ほらぁ~、オリぺちゃん怒っちゃった。コン、謝って!ごめんね、オリぺちゃん。」
ハルカがそう言いながらオリぺの頭を撫でる。
すると、
オリぺは白い尻尾を振り、
…キュゥ。
と、可愛らしくハルカの手にすり寄っていた。
ワンッ!
『…今飲んだばかりだから、徐々に効いてくるだろう、って…。…むぅッ!オリぺ、俺のハルカにコビ売んなよなぁ~ッ!』