記憶 ―夢幻の森―
コンは尻尾を振りながら、ハルカがオリぺを撫でる様子を見ていた。
びたんっ、びたんっ…と、
俺の膝に当たる尻尾からは、確実にコンの苛立ちが伝わってきていた。
「はははっ…」
俺はそう笑いながら、コンの頭を上からくしゃくしゃと撫でてやる。
『…なんだよッ、キース!俺、べぇっつにイジケてねぇしッ!!』
そう俺の手のひらから逃れようと、頭を振り回して強がった。
「…ふっ…、そうだな?…あ。ハルカ、羽根を出してみたらどうだ…?」
ワン…
『…なに、その笑い…。きゃあぁぁッ!キース、むかつくぅッ!』
そう騒いで俺の腹に頭突きをしてくるコンを押さえながら、ハルカの返答を待っていた。
ハルカは、
きょとんとして、
「…あ。あたし、羽根の出し方…知らないや…」
と言った。
そうか…。
羽根が足らないのは、
「生まれつき」だと言っていたな…。
「…ねぇ、コン。羽根の出し方って、どうするんだっけ。」
『……えぇッ!?俺に聞かれても、ねぇ…?』
自分が怒っていた事も忘れ、静止して俺に同意を求める。