記憶 ―夢幻の森―
彼女もまた、
力一杯に俺を抱き締めた。
それだけで…、
俺の胸は苦しくなる。
涙が出る。
手が、震える。
「…ありがとう、キース。本当に、…ありがとう…いっぱい助けてくれて…。お友達になってくれて…」
涙を堪えたハルカの言葉に、
「…こちらこそ…」
そう答えるのが精一杯だった。
俺は、ハルカの光になりたいと思った。
昼のない世界で、
まるで木漏れ日の様に…。
でも、違ったんだ。
俺の方が光を求めていたんだ。
自分の哀しみを越えられなくて、光を探していたんだ…。
そんな哀しみさえ…
俺の心を解き放ってくれたのは、
ハルカの笑顔だった。
ハルカという存在、
…そのものだった…。
あの扉をくぐって、
ハルカと出逢ってから、
ずっと…
暖かな光に包まれていた。
木漏れ日の様な優しさに包まれていたのは、
俺の方だったんだよ…?
「…有り難う、ハルカ…」
俺はハルカをそっと引き離し、
小さな手のひらを、
ぎゅっ…と握りしめていた。
「…あたし、絶対また…っ…逢えると…思うっ…」
「あぁ…」
「…そしたら、今度は。ずっとずっと傍にいてね…?」