記憶 ―夢幻の森―


「――…ぁ!…コン!?お前…ッ!!」

俺はある事に気が付いて、にやにやと笑うコンを見る。


ワン、ワンッ!
『…わはははは。きゃあぁぁッ!キースが怒ったぁ~ッ!!』

そうコンは楽しそうに、俺から逃げるようにしてハルカを追いかけて…

二人は、
俺から離れていった。


「…コン、お前『約束』を破ったな…!?」


俺の足は、
二人を追いかけようとして…


「……ぁ…」


…止まった。


一見…、
楽しそうに笑う彼女たちの後ろ姿は、
…震えていて…。


俺の…
ハルカの温もりの残る頬にも、

熱いものが、流れた。



ハルカとコンは、
一度も…、
俺を振り返ってはくれなくて…。


二人が、
あの石柱を越えると、

その姿は、
見えなくなった…。




――笑顔で、さよなら。


ハルカらしい別れ…。



俺が目を伏せると、

我慢していた大粒の涙が、
光る大地を濡らしていた。


きっと…

この涙は、
砂漠時代からの一生分。

喜びも、哀しみも…
溢れる涙も、

自分の全てを、受け止めたら…


…自分の事を、
少しだけ…好きになった。


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