記憶 ―夢幻の森―
20・貴女へと続く道
20・貴女へと続く道
「…あぁ~あ。」
僕は空を見あげて、
ため息をついていた。
今日も空には、
白い「きり」がいっぱい。
きゃははは…
そうやって、広場で遊ぶ同じ年の子がみんなで笑っていた。
僕はその中には混ざらずに、まるい広場が全部見えるベンチに座っていた。
「ガス灯」のオレンジ色の明かりが、上から僕を照らす。
暗い空。
白い「きり」。
汽車のけむり。
工場の、
カンカン…っていう音。
その中で、
僕は自分のヒザにほおづえをついて座っていた。
通りかかった男の人が、
僕の前で止まった。
「…よぉ、僕。お前は皆と一緒に遊ばないのか…?」
「うん…」
知らない人だった。
なのに、その人は僕のとなりに座ってきて、僕に話しかけてくる。
「…お前、何歳?」
「……5さい。」
僕は自分の年を言うのが、嫌いだった。
他のみんなより「大人っぽい」って言われる。
自分でも、そう思う。
それでも、
僕は僕が好きだから、いいと思った。
「…なんか、暗いなぁ!悩み事でもあるのか?」
「……。」
なんで、知らない人にこんなこと聞かれるんだろう。