記憶 ―夢幻の森―
「何ぃっ!?」
…そうなんだ。
僕は、これを手に持って生まれて来たんだって。
お母さんには…、
誰にも言っちゃダメだって言われてた。
「…そりゃあ、また非現実的な、ロマンチックな……」
「僕ね、ユメで見たんだよ!ようせいの女の子と『おそろい』なんだ、これ!」
お兄さんは、優しく僕を見ると言ったんだ。
「…お前も、大きくなったら俺みたいになれっ!俺は一足先に樹海へ行って、お前に会えるのを楽しみにしてるよ!」
「――うんっ!」
「…お前の名前は…?」
「僕は、キー…」
「――ちょっと待て!…見ろ、あそこ…」
「…?」
僕が名前を言いかけると、お兄さんは少し向こうを指差した。
広場の向こうで、
男の人と女の人が、
仲良く並んで歩いていた。
「…あの男の人な?俺の大学の先生なんだけど…」
「…うん?」
お兄さんは、
僕にこっそり耳打ちをした。
「…あの人、妖精なんじゃないかって、俺は思ってる。」
「…えぇ…!?」
僕が目をきらきらさせてその男の人を見ていると、
お兄さんは立ち上がって、
その人の所へ走っていった。