記憶 ―夢幻の森―
「――…セイジさんッ!!」
お兄さんは、男の人をそう呼び止めた。
「…あぁ。君は確か…、リュウくん…」
男の人は立ち止まって、
お兄さんを見て目を細めた。
「…嬉しいなぁ!覚えていてくれたんですか?」
お兄さんはそう笑いながら、
僕に来い、と手招きする。
「あぁ。授業に一番熱心な生徒だからね…!」
ようせい、さん…?
僕はドキドキしながら、
その人たちに近づいた。
お兄さんは、男の人と何だか難しい話をし始めて…、
僕は女の人を見た。
本当に、
「ようせい」なのかな…?
僕を見て、ニコッと笑うその人のお腹は、
大きかったんだ…。
「…おねえさん、赤ちゃん生まれるの?」
「うん、そうよ?もう動くのよ。触ってみる…?」
そうお腹をさすった。
僕は手をのばして、
大きな大きなお腹をさわってみたんだ。
――ぴくんっ…
って、
お腹の中で赤ちゃんが動く。
僕はおどろいて、
手を引っ込めたんだ。
「ふふっ、大丈夫よ!さぁ、もう一回…」
僕が見上げると、お姉さんがそう笑っていた。